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#003 POTENTIAL : 2020.09.11

マスターピースのモノ語り

マスターピースのバッグには、ひとつひとつに様々なストーリーが宿ります。ただのバッグではない、物語が詰まったプロダクトがどのように生まれたのか。

スペックではないストーリーを、お届けする企画「THE STORieS」。


文 : 岩井祐二
1977年京都府生まれ。雑誌『カジカジ』編集長を経て、2017年に独立。大阪・中津に編集型ショップ「IMA:ZINE」を立ち上げる。現在も雑誌制作や各種クリエイティブに携わる編集者としても活動。

 

成分不明の力強さが宿るまさにマスターピースな傑作。

長らく優勝から遠ざかっている我が虎には、掛布と岡田、バースから確固たる“それ”は現れていません。強いて言えば2003年から2005年の今岡や井川、藤川だが、決して“それ”ではないし、いまを見ても、近本? 大山? ボーア? うーん。誰でもない。可能性があるとすれば、高橋遥人だけど、まだまだこれから。他の球団を見れば、柳田がいるソフトバンク、山川がいる西武、鈴木誠也がいる広島、坂本と菅野がいる巨人、近年優勝してきた球団には間違いなく“それ”が存在します。その存在はただ実力があるというだけではなく、ファンからは大きな期待感を、対戦相手からは畏敬の念を抱かれ、味方を鼓舞する力もあれば、たった一瞬で試合の流れを変えてしまう魔力さえも纏う。要は、すべて“それ”次第で状況は変わるんです。

なにも野球に限った話ではありません。サッカーで言えばカズ、中田、本田。相撲で言えば貴乃花。ボクシングで言えば辰吉。ビリヤードで言えばエフレン・レイズ。戦国時代で言えば三英傑。明治維新の坂本龍馬。日曜劇場で言えば半沢直樹。梨泰院クラスで言えばパク・セロイ。主人公ということではなく、もっと別の存在感、もっと別のオーラを纏っているものが“それ”なんです。

“それ”ってなんやねん、とそろそろ言われそうですね。なんの話をしているかというと、今回は“顔”の話をしているんです。他の言い方だと“エース”、“真打ち”などでしょうか。

どれだけ能力の高いメンツを揃えたところで、“顔”がいないものは弱さを露呈する瞬間がある、というのは僕の持論です。スポーツばかりで恐縮ですが、メッシのいないバルセロナは怖くない、クリスチャーノ・ロナウドのいないポルトガルも。清原のいない西武、ジョンがいないビートルズ、小藪がいない新喜劇、どれも物足りないし、強さがない。

サッカーが好きなみなさんなら覚えていると思いますが、2014年ブラジルW杯の日本のグループリーグ初戦、1点リードで迎えた後半17分の出来事です。当時のコートジボワールには、トゥーレにカルー、ティオテ、ジェルビーニョ、ボニー、オーリエと、才能豊かな選手たちが揃っていました。それでも日本に1点リードを許していて、どこか乗り切れない中でズルズルと来ていたのです。ところがこの状況がある男の登場で一変します。ディディエ・ドログバです。プレミアリーグでは得点王を2度獲得し、チェルシーに黄金時代をもたらしたアフリカサッカー史上に残る選手です。その彼が後半17分、ピッチに立つのですが、ライン際で準備を始めた瞬間から会場の空気が変わったことがテレビ越しに伝わってきました。日本代表は明らかに警戒心を強め、コードジボワール代表は全員の表情が変わり、会場には“何かが起こる”という期待感が充満しました。当時のドログバは自身のピークを過ごしたチェルシーを離れ、中国リーグからトルコリーグへと移っていて、実力はあれども選手としての能力はすでに著しく低下していました。それでも日本人は全員が思ったはずです。“怖い”と。これが“顔”のなせる技です。すべてを一瞬で変えるオーラを纏っているもの。そのチームを存在だけで象徴するもの。実力はもちろんですが、それだけではない、成分不明の力強さと安定感が他とは圧倒的に違うのです。

これは僕たちの大好きなファッションにも当てはまります。ナイキがここまで大きくなったのはエアジョーダンをはじめとしたバッシュがあったから(と僕は思っています)、アディダスにはジャージ、APCにはデニム、ブルックス ブラザーズにはシャツ(残念ながら本国は大変なことになりましたが)があったから、彼らが“顔”になって世界に広まったからこそ、そのブランド力を強めて、皆が求めるブランドへと進化していったのだと思います。

そして、我らがマスターピースにも、この“顔”は存在します(長〜い前置き失礼しました)。シリーズ名は“POTENTIAL ver.2”。アウトドアのバッグやギアに見られる機能的な要素を、タウンユースへと落とし込んだ名作シリーズです。

「ブランドの顔ですね。様々なディテールとか機能が盛り込まれているため、価格もそれなりにします。ナイロンのバッグでここまでハイエンドな物をお客様に受け入れてもらえたのは、マスターピースにとって大きな自信となり、その後のブランドの進む道にもつながったと思います。それほどに、この“POTENTIAL ver.2”シリーズは大切なもので、これからも“顔”としての役割を担って欲しい存在です」とディレクターの古家くん。

確かに機能は山盛り。風も水も通さないオリジナルの3レイヤーの生地、付属のレザーも防水、ハーネスにはNASAが使う“アウトラスト”(人間が最も心地いい温度に保たれる生地)を採用、止水ジップに、金属製の引っ掛け冠やD冠、PCスリーブも漏れなく。これだけスペックが高いのだから、古家くんのこだわりも何か隠れた機能かなにかと思いきや…。

「このデイパックは“POTENTIAL ver.2”シリーズの最新作なんです。デイパックってローテクで使い潰して、はい次、みたいなイメージなんですが、そのローテクの概念を裏切って、より機能的なものにすれば長く使えるものになるかなと思って。その上で、“POTENTIAL”シリーズにあった機能性はできるだけ踏襲した意欲作なんです。でも個人的に一番見て欲しいのは、横から見たときのシルエット。僕がデイパックで一番好きな箇所が出ているポケットのシルエットなんですよね。そこには相当気を配りました。それから一番上の取っ手から斜めに伸びるライン。斜めに付いた取っ手から美しい傾斜を描いて、荷物を入れても型崩れしないようにデザインしています」とまさかのこだわりポイントが。

どうりで最初に見たときに違和感を感じたわけだ。デイパックって聞いていたのに、何か特別なオーラを纏っているな、と。機能推しの品番だと思って取材に臨んだから、そんな細かいこだわりがあるのは知らなかった。確かにデイパックってスニーカーと一緒で使い潰してナンボ、みたいなところがありますが、これなら長い期間使うことができそうだし、この形なら横から見たときの全体の洋服のシルエットも美しく見せてくれそう。ファッションを邪魔するんじゃなく、さらにシルエットで遊べるカバンか。うーん、なかなかどうして、やるじゃないか、マスターピースと古家くん。

差し詰め、このデイパックは、巨人の岡本、ロッテの安田、ヤクルトの村上、サッカーで言えば久保、お笑いで言えば第7世代、ビリヤードで言えばジョシュア・フィラー(すみません、好きなので)のように、“新しい顔”になるであろう、次世代の中心選手ということか。

であるならば、街にこのデイパックを持った人たちがあふれることもあるかも。古家くんのこだわりのシルエットが、街のスタイルに小さくない影響を与えるかもしれません。それぐらいの期待感がある“POTENTIAL ver.2”のデイパック。マスターピースの歴史に残る名品であることは、ほぼ間違いなさそうです。

Text : Yuji Iwai
Illust : Shuji Kawaguchi

master-piece Director

Kouki Furuya

昨年、新しくブランドディレクターに就任。190cmほどの大きな身体からは想像できないロジカルで柔らかな語り口でブランドの魅力を語るマスターピースの看板選手。


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