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#009 congrats for 1300th anniversary with master-piece : 2021.12.15

マスターピースのバッグには、ひとつひとつに様々なストーリーが宿ります。ただのバッグではない、物語が詰まったプロダクトがどのように生まれたのか。

スペックではないストーリーを、お届けする企画「THE STORieS」。


文 : 岩井祐二
1977年京都府生まれ。雑誌『カジカジ』編集長を経て、2017年に独立。大阪・中津に編集型ショップ「IMA:ZINE」を立ち上げる。現在も雑誌制作や各種クリエイティブに携わる編集者としても活動。

強い想いと意思が生み出した
新しい価値観が込められたバッグ。

世の中は空前のサウナブーム。取材や撮影中の話の中で、趣味はなんですか? の問いに、銭湯やサウナと答える人が多かったこの1〜2年。サウナの聖地と言われるような場所にも何件か取材に行ったりしましたが、僕は身体に合っていないのか、“ととのう”ことができません。町の銭湯も実は苦手です。もともと人見知りが強い僕は、あの地域コミュニティの縮図である銭湯に裸で入り込むことができません。地元の人たちが愛してやまないこの空間を、僕みたいなものが入ることで乱してしまわないか、なんてことを考えてしまいます。スーパー銭湯は大好きです。何より気を遣わなくていいし、エンタメ要素も満載で、漫画読みながら、マッサージ受けて、お酒を飲んで、またお風呂に浸かって、とちょっとした天国です。日常にある、これらの日本が誇るべき風呂カルチャーは、毎日の疲れを癒してくれ、身体もスッキリさせてくれる素晴らしい文化だと思います。

そして、風呂カルチャーを語る上で欠かせないのがもうひとつ。温泉です。もはや別格です。様々な風呂カルチャーの中でも、温泉は僕にとっては完全に別格。銭湯やスーパー銭湯と同列に語ることさえ憚れるほどのものだと思っています。それだけ温泉は特別です。何か大きな仕事が終わったり、自分にご褒美をあげたいときは、モノを買うのでは無く温泉旅行、が僕の決まりです。若い時からそうでしたが、歳を取ってからは、よりその嗜好が強くなりました。良さがよりわかるようになったのかもしれません。

源泉が溢れ出る温泉で身体をほぐし、うまい飯に美味しい酒、普段と違う布団で寝て、起きればまたうまい飯、そして温泉。何も考えずにただただ自分を解放することで、また新しい毎日を頑張るパワーを充電する。言うなれば自分をオーバーホールするような感覚で、僕は温泉旅行を楽しむのです。楽しむというよりかは嗜むのです。こんな仕事をしているからこそ、クリエイティブなことを導き出すだけの内なるパワーが必要なのですが、温泉はその源をグツグツと煮込んで、僕の中へ新しい閃きを放り込んでくれる貴重な存在です。

決して自分と文豪を並べるわけではありませんが、古の小説家は皆、温泉を愛しました。川端康成しかり、夏目漱石しかり、森鴎外しかり。彼らも温泉に浸かり、宿で過ごすことで、幾ばくかのパワーを自身の中に放り込んでいたのだと思います。温泉が彼らの書いた名作へとつながっているのは間違いありません。

ここ関西にもいくつかの温泉地はありますが、その中でもこちらも別格、数々の文豪に愛されたのが、兵庫県の北部、城崎温泉です。志賀直哉なんて、「城の崎にて」と小説の題名にしちゃってるぐらいで、泉質はもちろん、居心地もいいし、飯もうまいし、言うことなしの名温泉地です。夏は近くの海で海水浴、冬はなんといっても極上の蟹が味わえるとあって、日本全国から癒しを求めて多くの観光客が訪れます。その歴史はなんと1300年なんていうのだから、もはや日本最強の温泉地といっても過言ではないわけです。 城崎温泉の楽しみ方のひとつに“外湯”という共同浴場があります。チケットを買えば、誰でも楽しめるのですが、これがまた風情があっていい。浴衣でブラブラとする女性なんて、とても美しいものです。街並みも相まって、なんだか異世界に来たような雰囲気浸れます。しかもそれぞれの湯に、“夫婦円満”や“商売繁盛”、“開運招福”なんて、ご利益までついていたりして、是が非でも7つの外湯を全部回ってみたくなるわけです。

そんな日本の名湯である城崎温泉と、我らがマスターピースが、なんとまぁ、コラボレーションしちゃったって聞いた時は驚きを飛び越えて“???”が止まりませんでした。

ディレクターの古家くんは色々仕掛け上手ですが、さすがにこれは奇をてらってません? と訝しく思ったのですが。

「城崎温泉がある豊岡市には、僕たちのものづくりのベースとなっている工場“BASE TOYOOKA”があるんですね。豊岡はカバンの町としても知られていて、日本でも有数の生産量を誇る場所なんです。そんな町の中に、日本に誇るべき温泉地があって、そこと何かできないかと思ったのが始まりでした」

なるほど、そっか、そうでした。豊岡はカバンの町、これはストーリーの始まりとしては納得。筋が通っているじゃないか、古家くん。

「外湯めぐりの人たちに使ってもらえるバッグを作りました。濡れたタオルや衣類を入れても大丈夫な素材をもとにして、昔の巾着を思わせるようなデザインで仕上げたのですが、それだけではなくて、外湯めぐりのパスポートを入れられるケースも付属させたんです」

確かに、外湯めぐりとか、温泉に入る時、カバンって困るんですよね。旅館にあるナイロンの巾着ではなんだか頼りないし、なんといってもテンションが上がらない。そりゃこんなええのんあれば、僕も使いたい。で、聞けば、バッグ購入時には外湯めぐりの1 DAYパスポートまで付いてくるらしい。

「ご当地でしか買えないカラーのバッグも作って大いに反響もいただきました。結構なスピードで完売となりましたが、大きな目的は別にあって、このコロナの状況が落ち着いた時に、こういったコラボレーションを通じて、“城崎温泉”というワードがユーザーの皆さんの頭に残っていて、行ってみたいな城崎温泉、となってくれることだったんです」

古家くんの言葉が本当の狙いならば、少なくとも僕はそれに見事に引っかかってしまっている気が…。蟹も食べたいし、温泉行きたいな、なんて思ったら、いまではもう頭の中は城崎温泉でいっぱいになっているのです。

「コロナウイルスの蔓延で、城崎温泉は観光業として打撃を受けられていた。僕たちもモノを作る人間として少なからず打撃を受けていた。そんな中で、 “温泉”と“カバン”という違う商売をしている同士でも、同じ町を盛り上げたいという想いがあるならば、クロスオーバーさせて何か違う価値観を生むことができるんじゃないか、という最初の想いは実現できたと思います」

新しい価値観というものは、強い意思があれば生み出だせるもの。ましてやいまは状況が難しい中、あらゆることにチャレンジし、自らの手で何かをこじ開けて行かなければいけない時代。マスターピースのこの提案に正面からともに挑んだ城崎温泉もまた、素晴らしい意思を持っていたからこそ、成功したのだと思うのです。

日本全国には素晴らしい温泉地がたくさんあります。これは日本が誇る文化です。遠くてなかなか城崎温泉まで行けない方も、このバッグを使って違う温泉地で外湯めぐりするのもいいと思います。銭湯やサウナに行くときでも使えるし、普段使いもできるデザインなので、毎日だって使えます。そして、使っていく中で、機会があれば、ぜひ城崎温泉に足を運んでみてください。数々の温泉地を訪れた僕も自信を持ってオススメします。

それにしても古家くんは、いつ僕を城崎温泉に連れて行ってくれるんだろう。そんな他力本願な僕には、ご利益満載の外湯めぐりはぴったりなのかもしれませんね。

Text : Yuji Iwai


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