Warning: reset() expects parameter 1 to be array, bool given in /home/xb184468/master-piece.co.jp/public_html/mg/wp-content/themes/origami_all_white_3.1.0/single-journal.php on line 34

#002 master-piece x REBIRTH PROJECT COLLABORATION SERIES : 2020.08.24

マスターピースのモノ語り

マスターピースのバッグには、ひとつひとつに様々なストーリーが宿ります。ただのバッグではない、物語が詰まったプロダクトがどのように生まれたのか。

スペックではないストーリーを、お届けする新企画「THE STORieS」がスタートします。第二弾は、伊勢谷友介率いる「REBIRTH PROJECT」とのコラボモデルについて。火急の課題である“エコロジー”に対する小さな一歩を紡ぐお話です。


文 : 岩井祐二
1977年京都府生まれ。雑誌『カジカジ』編集長を経て、2017年に独立。大阪・中津に編集型ショップ「IMA:ZINE」を立ち上げる。現在も雑誌制作や各種クリエイティブに携わる編集者としても活動。

 

“小コツ”はいつの時代も正義。未来を開くための大きな一歩

小さなことからコツコツと。大阪のOG、西川きよし師匠の名言です。“塵も積もれば山となる”、“雨垂れ石をも穿つ”、“涓涓塞がざれば終に江河となる”。どれも同義語であり、類語です。どんなことでも小さなことからコツコツと。初めから大きなことを起こすのは到底無理で、全体で見れば小さな動きでもそれは大きな一歩へと繋がるものだと先人たちは教えてくれています。

偉そうな口上を垂れた僕ですが、小さなことからコツコツやるのが、本当に苦手です。勉強もそうですし、仕事もそう(長年の趣味であるビリヤードだけは別なのですが)、小さな努力を続けるのが下手で、すぐに大きな結果を求めてしまいます。だから、こんなことを書く資格はないのですが、“小コツ”が効果的なのは変えようのない事実なので、せめてこの原稿の中だけででも“小コツ”できる人間として書かせて頂きます。

どんなムーヴメントだって、まずはとても小さなコミュニティから始まるもの(汗)。誰かがやっていたアレが楽しそう、あの子が着ていたあの服がかわいい、なんていう小さな小さな伝播がのちに大きな流行を生んでいくものなんです。ストリートなんてその際たる例。デニムショーツが欲しいのにお金がないから持っている古着のデニムを切ってみた、なんて人がその服を着ていたら、それがカッコいいってなって、みんながデニムをショーツにしちゃうんですから。これが所謂ムーヴメントの始まりです。

ほとんどの社会現象やトレンドはそうやって、とても小さなことから、巨大なムーヴメントへと発展していきます。それはまるで今回僕らが苦しめられたウィルスのようなものなんです。伝染、感染とは良くも悪くもスピードが早く、気づけば大ごとに、なんていうのはよくある話です。

何年ほど前でしょうか。僕の記憶では12〜13年前かな。どこもかしこもエコ・エコ・エコ。今まで口にしたことがないようなワードが世の中を埋め尽くし、環境問題という、人間がそれまで直視してこなかった新たな問題が急に僕らに突き付けられました。オゾン層破壊、温暖化、気候変動、環境破壊、などなど、突然目の前に現れたそれらの言葉はどれも実態が掴めず、ただなんとなく、地球が危ないんだ、って世界の人々が意識し始めたのだと思うのです。

その時から、状況は大きく変わらずとも、あらゆる人たちの努力で、人間の意識はとても高まったと思います。いまでは企業にとっても“エコ”や“環境配慮”、“サスティナブル”は至上命題となりましたし、グローバルスタンダードになったと言っても過言ではないでしょう。

と、ここまで自分勝手に饒舌に述べてきましたが、実際のところ、僕たち人間はとても忘れやすい生き物です。自分たちにとって居心地の良い状態を足元から揺るがすようなものには蓋をします。見えないように、気づいていないように、自ずと行動を取ってしまいます。それは誰かの責任ではなく、もはや人の本能。“エコロジー”や“サスティナブル”は、その一種であり、今までの暮らしや経済活動を大きく変えてしまうため、日々意識するのはとても難しいことだと思います。

だからこそ、大切なことは、“小さなことからコツコツと”なのだと思うのです。しかも、それが自分で意識しなくとも、実はエコロジーに貢献している、なんてことがあれば最高だな、とズボラな僕は思ってしまうわけです。そんな僕の我儘な想いを具現化したようなものがもっと世の中に溢れないものか…と切に願っているわけです。

非常に長い前置きをしてしまいましたが、ここからが本題。今回紹介するバッグは、マスターピースと『REBIRTH PROJECT』のコラボレーションモデルです。『REBIRTH PROJECT』のコンセプトはこう。“私たちリバースプロジェクトは、人間がこれまでもたらした環境や社会への影響を見つめなおし、未来における生活を、新たなビジネスを通して提案しています。代表・伊勢谷友介のもと、様々な才能を持ったアーティスト・プロデューサーが集結し、2009年に設立されました。衣、食、住のみならず、教育・芸術・まちおこしといった分野において、社会議題の解決をクリエイティブな視点から試みています”(HPより抜粋)。代表はそう、あの俳優の伊勢谷友介さん。彼を中心に、様々なアプローチで、地球環境をよくする活動を繰り広げています。そのコンセプトの中でも僕がもっとも大切だと思うことは“クリエイティブな視点”。ここがなければ、他のものと差はありません。要はカッコいいか否か、です。

「2011年から始めたコラボレーションなのですが、当時僕はまだ入社しておらず、この『REBIRTH PROJECT』とのモデルを後々自社で買って使っていました。シワ感がカッコいいな、って単純な理由で(笑)。」とマスターピース・ディレクターの古家くん。このコラボレーションの内容を本人の口から説明してもらいましょう。「このバッグのメインの生地として使われているのは、車に装備されているエアバッグです。実は車は98%がリサイクル可能でほとんどの部品や部材は再利用できるんです。そのリサイクルできない2%の中にこのエアバッグが含まれていることを伊勢谷さんが知り、これを使って何かできないかとなって、マスターピースでバッグを作らせていただくことに。付属レザーには、害獣として駆除されていた鹿を“INOCHIKAプロジェクト”という取り組みによって再利用された鹿革を使っていたり、付属素材にはリサイクルのポリエステル生地を使ったりと、徹底的に再利用にこだわった仕様です」。

未使用のエアバッグ

エアバッグっていうのは不思議な存在で、使われない方がいい、車の中の唯一の部品。使われたならそれは事故が起きたということになるから、日の目を見ることもなかったもの。しかも再利用ができないなんて、なかなかの不遇ぶり。と、そこに光を当てた『REBIRTH PROJECT』もさすがだけど、それをこのグッドデザインに落とし込んだのもさすがはマスターピース。この“クリエイティブ”が無ければ、消費者の心は掴めないわけで、せっかくの“エコ精神”も無駄になる。だから、要はカッコいいか、否かとなるわけです。

なので、僕は、“これはエコだから”とか“サスティナビリティを感じるから”なんて理由で、物を買うことはありません。あくまでも基準は、カッコいいか、否かです。それがたまたまエコロジーに寄与できるのであれば尚よし。スタート地点はデザインです。

その点で言えば、このバッグはカッコいいから成り立っているわけです。エアバッグにもともとあるシワ感をそのまま表現した質感、それを生かすミニマルなデザイン、単純に使いたくなる一品なのです。

master-piece × REBIRTH PROJECT Collaboration Series No.02010-rp

「僕たちマスターピースができることとして、ブランド全体で“捨てられないデザイン”を意識しています。商品はもちろんですが、お買い上げいただいた商品を入れてお渡しするショッパーに至るまで、“捨てられない”ことでゴミを減らすことが、地道ながらも最も効果的なエコロジー=企業としての社会的責任のひとつの示し方だと思っています」と、今回も立派な想いを聞かせてくれた古家くん。これぞまさに“小さなことからコツコツと”精神の極みではありませんか。

エコロジーやサスティナブルは、ともすればビジネスへの転嫁を批判されがちです。しかし、そこにビジネスが無ければ、継続できません。持続可能なモノづくり=サスティナビリティは、持続可能なビジネスモデルでなければ健全ではないのです。

であれば、カッコいいものを作って、実はそれがエコロジー、なんてのがブランドとしての理想形なわけです。消費者からすれば、それを買うことは気持ちのいいことです。エコを考えてものを買うより、カッコいいと惚れたものを買う方が絶対に楽しいですから。

とても小さいことです。このバッグを一つ誰かが使っても世の中が大きく変わることはありません。ですが、考えてみてください。このカッコいいバッグを使うことで、ほんの少し、とても小さいことですが、本来は廃棄されるはずだったものを使っていることになるんです。そうです。それで貴方もれっきとしたエコロジストになれるんです。

“小さなことからコツコツと”。

きよし師匠の名言は、未来永劫、地球がある限り、燦然と輝き続けるでしょう。

Text : Yuji Iwai
Illust : Shuji Kawaguchi